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2015年09月27日

中村地域医療塾

昨日は、午後過ぎから、横浜地区の朱種で開催されている中村地域医療塾に参加していました。

今年度は中村伸一先生のお話だけではなく、地域医療にたずさわるゲストスピーカーを招いて、TEDのようにご自分の専門分野についてお話くださるもの。

前回は、多田歯科医院の多田先生、リハぷらすの達川先生のお話でした。(ちょっと諸事情で聞けず残念無念)

今回は、県内外で職種の枠を超えて活動されている理学療法士の福田裕子(ゆうこりん)さん、敦賀市役所で働いておられる、山口有美さん。

女性スピーカーおふたりの、特に打ち合わせたわけでもないのに、お話されていく中でそれぞれのストーリーが響き合い、中村先生のお話があらかじめ用意されていたにもかかわらず、おふたりの響き合ったストーリーにみごとに添った、「こんな贅沢な話を、わたしらだけで聞いていいの?」って思うほど、もったいなくもありがたい時間でした。

スピーカーおひとかためは、ご自身のおばあさまとのかかわりの中から関心を寄せたことがきっかけでフランスに留学され、老年学(加齢学)を専攻して学び、研究してこられた山口さんのおはなし。

高齢者とはやがて守られるべき生活弱者、ではなく実は多数派である自立した高齢者としていかによりよく生きるかをたくさんの専門分野が持ち寄られる(医療、福祉などだけでなく、心理学、社会学、経済学など、多岐にわたる)比較的歴史の新しい分野。というか、近代から現代にかけて必要とされるべくして生まれた分野でありましょう。

そういう学問があることも初めて知りましたが、この考え方が、ひろくたくさんの人の心の中に当たり前のようにあるならば、老いを迎えるもの、老いを迎えるものを支えるものとして、きっともっと心強く感じられることなのだろうなと思いました。

また、フランスではまだ少数、地域差はありながらも管轄や運営組織、報酬について法制され、実施されている、資格などを持たない一般家庭が、要介護高齢者の家庭受け入れ(生活をともにしながらの介護は受け入れ側、医療サービスは訪問看護、マネジメントは行政)をする、「異世代ホームシェア」という制度(ビジネスではなく、職業のひとつとして)について。

世界でも問題になる部分は共通なんだなあと感じ入りつつも、地域の雇用・失業問題と、高齢家族を持つ家庭事情などのマッチング、コミュニティづくりなど、日本に導入できうるかどうかはともかく、それぞれの国が迎える高齢化という避けられないことがらに対しての事例のひとつとして、専門職、関係者のみならず、知られるといいなと思ったことでした。

おふたかためは、福田裕子さん。
理学療法士として、いち女性として、想いを体現させて社会のなかでどう生かしていくかということを、ご自身に問いかけ続けながら、モデルケースのないあたらしい道を切り開いて歩き続けられたストーリーは、もちろん熱く、それでいてしなやかで…勇気づけられるものでした。

たくさんの場で、健康指導、おもに運動指導もなさってるゆうこりん(先生って呼ばれたくないの、ゆうこりんって呼んでね、っておっしゃるので呼んじゃいます♡)、お話されていたグループワークの面白さ、「待つという積極性」の大切さは、わたしは妊婦さん・産後ママさんのケアでとくに感じることが多いのですが、もっと、伝える側としてたくさんの引き出しを持ちたいな、と、あふれて止まらないゆうこりんのお話しを聞きながら思いました。

最後に、中村先生のまとめ。
そして、山口さんの学びの原点がおばあさまのことに対して、おじいさまのお話から始められたのは、そんな打ち合わせもなくたまたまです、とおっしゃいましたが、それを受けての先生のお話は、やはり、偶然で片づけてはいけないことをお伝えくださるようなものでした。

つながり、ミラーリング、ネットワーク、絆。

「結局、たどり着くのは哲学、仏教なんだよね」というお話から、「インドラの網」について、思い出していました。

インドラの網とは、帝釈天(インドラ)が住む宮殿の天井に張り巡らされていると言われる網(ネット)のことで、その網の結び目には水晶が結び付けられています。

そしてその無数の水晶がお互いに光を反射しあい、映し合い、共鳴しあうことでインドラの宮殿は光にあふれるといいます。

仏教の教えによれば、その水晶は私たちひとりひとりの心を喩えたもので、インドラの網は、お互いが作用し共鳴しあう世界、「相互依存の世界」を表しているのだそうです。
(前の身体呼吸療法の勉強会での受け売りです。同名の宮沢賢治の短編小説もあります、そちらもおすすめです)

先生がおりおり話される「絆」、について。

今回は、緩やかさと、強さを併せ持ってこそのつながりが、人をしあわせにするという新しい考察でした。

「前にも話したと思うけどね」と前置きして話されることがらは、確かに回を重ねて参加することで、あー、聞いたことあるなと思いつつも、初めての人にはことさら驚きを以て迎えられるエピソードはきっと先生が大事にされてるがゆえに話されること、重ねて聞くことで深まる理解、先生独自の目線を通した面白くも深いお話しをきけるこの場をいつもありがたくうれしく思っています。

医療職の人の集まりのように思え、なんだか敷居が高くお感じの方もおられるようですが、わたしは患者の家族という立場で参加しています。

ゲストスピーカーとの三部(二部)制という形をとってからはさらに、参加した人それぞれにもたらされる意味の大きいものとなっているなと感じます。こころにいっぱいあたたかいお土産をもらえます。

次回は、12月12日。

年間を通し、診療の傍ら国内あまねく100人単位の講演を数多くこなす中村先生をして「僕にとっては朱種という場の胸を借りて、大きな意義のあるチャレンジをしているんだよ」とおっしゃる、他にないこのぜいたくな催し、朱種という素晴らしい場にも触れて、たくさんの方に聞いていただけたらなと願っています。

投稿者 あつこ : 2015年09月27日 17:18

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